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サッカーファンが待ち望んでいた新旧の融合は今回も実現せず。コパアメリカに向け不安材料が残った平成最後の代表戦。
先日横浜で行われたコロンビア戦から一転、スタメン11人を総入れ替えし畠中(横浜Fマリノス)や橋本(FC東京)といった初招集の選手を先発に並べて臨んだ森保ジャパンでしたが、神戸で行われた平成最後の代表戦はコパアメリカへの雲行きを怪しいものとする試合内容となってしまいました。
この試合、フレッシュな面々が並ぶスタメンの中でも特に注目が集まったのがキャプテンマークを巻いた香川真司(ベジクタシュ)です。W杯ロシア大会以来の代表招集となった今回、途中出場で代表のピッチへ戻ってきた背番号10がボリビア戦ではW杯ロシア大会を共に戦った乾(アラベス)や宇佐美(デュッセルドルフ)らと同じスタメンに名を連ねたことから、幾度となく日本代表を救ってきたエースの活躍を期待したサッカーファンも多かったでしょう。
そしてベンチに控える南野(ザルツブルグ)や堂安(フローニンゲン)、中島(アル・ドゥハイル)ら、森保ジャパン体制になって台頭してきた若手選手たちとの「新旧融合」にも期待が集まっていました。
また、宇佐美が試合前に「自身にとって重要な一戦になる」と話していたように、6月中旬から幕を開けるコパアメリカを目前に控え、この試合でスタメンに名を連ねた選手らにとっては生き残りを懸けた試合という位置付けでもありました。
ですが結果として「旧」代表組が多く名を連ねた中盤は終始精彩をかきボリビアのゴールを脅かせず、キャプテンマークを巻いた香川に至っては中盤の低い位置まで下がってプレーしていたのもあり、シュートはゼロ。試合を決定付けたのは途中出場の「新」代表組を象徴する中島でした。
香川、宇佐美、乾らが退いて入った中島や南野、堂安らがすぐさま持ち前の攻撃力を披露してボリビアのゴールを抉じ開けただけに「新旧融合」どころか、W杯メンバーと新体制メンバーの明暗をはっきりと分ける試合になってしまいました。
「新」世代のメンバーが途中出場ながらも抜群のコンビネーションと攻撃力で試合の流れを変えれる力を持っていることが証明された試合であり、「旧」世代のアピール不足が露呈したボリビア戦。
1−0でボリビアを下しながらも、W杯メンバーの躍動や多くのサッカーファンが期待を寄せていた「新旧融合」は最後まで実現することがありませんでした。
一勝一敗で終えたコロンビア戦とボリビア戦での結果を、森保監督はどのように捉え、コパアメリカに向けてどのようなメンバーを選考するのか。
W杯で躍動としたメンバーと若手の新旧融合か、それとも世代交代かーー。非常に注目が集まります。
最後まで現れなかったポスト大迫。鎌田もワントップではアピールできず。
日本代表のエースである大迫勇也(ブレーメン)のコパアメリカへの不参加が決定的となり、今回のキリンチャレンジカップでは以前から問題視されていた“ポスト大迫探し”のミッションが再び課せられていました。
そんな中、今回初招集となった鈴木武蔵(コンサドーレ札幌)はコロンビア戦で先発するも不発、続くボリビア戦でチャンスをもらったのはこちらも代表初招集の鎌田大地(シント・トロイデン)でした。ベルギーの地で躍動する鎌田に対し代表入りを望む声も国内中から上がっていただけに、今回の招集とボリビア戦でのスタメン入りは、“ポスト大迫”になれるかどうかのテストの意味合いが大きかったのは周知の事実でした。
しかし代表合宿の際に鎌田が口にしていたように、彼にとって1トップの経験はなく、今回のボリビア戦がぶっつけ本番。「初めて」と口にしていた1トップでも時折DF陣の合間を縫うようなポジショニングでボールを受けるなど、随所で彼らしい光るプレーを魅せていたものの、ベルギーで幾度となく魅せていた得点力をアピールすることはできずにコロンビア戦での鈴木同様、“ポスト大迫”として期待されていた存在感は示すことができずに83分にピッチを退くことになりました。
ボリビア戦で決勝点を挙げた中島を中心に、中盤にはクオリティの高い選手が多く存在するだけに、非常に大きなキーパーソンになる森保ジャパンでの1トップ。その期待を背負い、代表初スタメンとなった鎌田でしたが、最後まで“大迫勇也”を彷彿とさせるプレーを見せることはできませんでした。
“ポスト大迫”にはなれませんでしたが、鎌田のプレー自体はそこまで評価の低いものではなかったと思います。それだけに、彼を本職の中盤で見たかったというファンも多かったのではなかったのでしょうか。
一瞬で試合の流れを変えてみせた3人組。日に日に進化を遂げていく3人とに抱く未知の可能性。
ここまで不安要素を多く取り上げてきましたが、当然ボリビア戦での収穫もありました。それは、森保ジャパンになってから幾度となく進化を遂げてきた中島、堂安、南野の3人が揃って好調を維持し、僅かな時間でも試合を決定付ける力を持っていることが証明された点です。
61分に堂安と中島がピッチに登場すると、その7分後には南野と、今の日本代表を引っ張る3人が同時にピッチに立った途端に膠着していた試合の流れが一変したのは誰の目にも明らかでした。そして3人が揃ってから僅か10分後には中島のゴールで均衡を破ると、その後も前線の3人を軸に見間違えるような攻撃を見せて終始ボリビアを圧倒。追加点こそ奪えませんでしたが得点シーン以外でもバーを叩く場面もあり、途中出場という難しいシチュエーションでありながらも3人がピッチに揃えば短時間でも十分に結果を出せる力があるということが証明された試合となりました。
試合を重ねるごとに連携を高め合い進化していく3人が、攻めきれずに苦戦する日本代表を救ったと言っても過言ではないボリビア戦。平成最後と称された代表戦でも更なる進化を見せた3人が、コパアメリカではどのようなプレーで日本代表を牽引してくれるのかーー。
未だかつてないほどの鮮やかな連携と創造性溢れるプレーでボリビアのディフェンス陣を切り裂く3人の姿に、6月から始まるコパアメリカでの、そしてその先に控える2022年カタールW杯を賭けたアジア予選と、未知の可能性をと希望を抱いたサッカーファンも多かったのではないかと思います。